「豊田市こども発達センター16周年記念セミナー」を開催いたしました。
 
 
 

 2011年11月6日(日)、こども発達センター「ひまわりホール」にて「豊田市こども発達センター公開セミナー」を開催いたしました。当日は、例年より暖かな秋雨が降る中、220名もの方々に参加していただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。
 豊田市こども発達センターは、開設以来、子ども達が小さな時から地域で健やかに育ち、家族が子どもの発達を見守りながら、安心して子育てができるようにと願い、発達・子育て支援に努めてまいりました。設立から16年を経た現在、社会状況や法律、制度も変化し、発達に心配のあるお子さんへの乳幼児期からの支援に対する重要性も、より叫ばれるようになりました。そこで、今回のセミナーでは、子どもたちとご家族にとって有益な早期支援とはどのようなものか、皆様とともに考えてみたいと思い、「早期支援の過去・現在そして未来を語る」をテーマにいたしました。
 午前中の基調講演では、高橋 脩センター長が、1960年代の福祉施設の時代から現在の地域療育への転換期までを、歴史をさかのぼって説明し、「現場の支援者こそが未来にとって必要なことがわかる。歴史に学び吟味し、次の課題を見つけていくことが一歩先の支援を考える上で大切である」と述べました。加えて、障がい別に早期支援にとって必要なことを明示し、家族支援と支援者支援なども盛り込んだ内容でした。
 午後は、肢体不自由児・重症心身障がい児と知的・発達障がい児の2つの分科会形式のシンポジウムを開催いたしました。それぞれ、障がいのある子どもの早期支援に携わっている方々、保護者の方々にお話いただきました。肢体不自由児・重症心身障がい児のシンポジウムでは、児童デイサービスひかりっこ園長の大南友幸先生、保護者の立場から倉知智美様、発達センター“たんぽぽ”の松野施設長が加わり、子どもの発達支援と保護者間の連携の必要性から、NICUとの連携や統合保育などの先駆的な取り組みまで、熱く語られました。発達障がい児・知的障がい児のシンポジウムでは、医療の立場から名古屋大学医学部 親と子どもの心療科の吉川徹先生、保護者の立場から千葉あおい様、支援者の立場からは発達センター“あおぞら”の酒井園長の3名が、乳幼児期の関わりで大切なこと、そして支援者に期待することなど、参加者からの質問にも対応しながら、丁寧に語りあいました。
 あいにくのお天気にもかかわらず、多くの方がお越しくださり、盛会のうちにセミナーを終えることができました。ありがとうございました。

 
テーマ「早期支援の過去・現在 そして未来を語る」
高橋 脩(豊田市福祉事業団副理事長 豊田市こども発達センター長)
 
 基調講演では、改正障がい者基本法に明文化された特筆すべき内容、「過去」から「現在」までの障がい児者福祉の動向と過去に学びそして活かすポイント、障がいのある子それぞれの早期支援と家族支援のあり方、地域療育システムの整備、障がい児支援の見直しの検討内容、「未来」に向けた動きについて、お話いただきました。
 改正障がい者基本法では、「発達障がい」が障がい者に定義されるとともに、「地域社会における共生」が明記され、「療育」が国及び地方自治体の義務となったことなど、特筆すべき内容が盛り込まれています。「過去」を振り返ると、「施設福祉」全盛の時代に個人の力で「グループホーム」を運営する取組や「コロニー」の運営をしつつも「地域福祉」に向けた取組を進めたという「未来」を見据えた先駆的な動きが見て取れます。「現在」には、10年先の新しい動きが内包されており、それを見逃さないようにすること、そして、過去の過ちを活かすことが大切です。「未来」とは「見えない現在」であり、「未来」を見ようとするのでしたら、「現場」から、「現在」をしっかり見ることが重要です。というものでした。
 講師の「温故知新」の言葉どおり、「過去」を振り返ることで「現在」の状況、そして「未来」に向けて私たちが取り組まないといけない貴重な視点を伝えていただき、多くのことを学ぶことができたとても有意義な基調講演だったと思います。
 
 
  テーマ「早期からの支援で育まれること ~それぞれの立場から~
   
 
発達障がい児・知的障がい児シンポジウム
   
吉川 徹 先生 (名古屋大学医学部 親と子どもの心療科助教)
千葉 あおい 氏(保護者)
酒井 雪枝   (豊田市こども発達センター 地域療育室長)


 発達障がい児・知的障がい児のシンポジウムは、名古屋大学医学部 親と子どもの心療科助教の吉川 徹 先生、保護者の千葉 あおい 氏、当センター地域療育室長 酒井 雪枝の3名がシンポジストを務めました。
酒井からは「早期療育について ―あおぞらでの取り組みから― 」をテーマにあおぞらの歴史や現状を語りました。あおぞらの歴史は昭和56年からのひまわり学園での療育に始まり、現在はこども発達センター内にある外来療育グループとして、今年9月時点で1歳から4歳までの555組の親子が参加しています。早期からの親子の支援のシステムとしては、保健所の1歳6ヶ月健診、3歳児健診、保健師などの紹介経路からあおぞらの利用につながるようになっています。また、あおぞらの役割として、子どもへの発達支援、家族への育児支援と障がい認知の支え、地域のこども園や小学校等への相談支援などを担っています。そして、「子どもの笑顔と母親の笑顔が宝物。待機期間があることや参加人数の多さなどの現状と課題はあるが、これからもあおぞらが親子でほっとできる場であり続けたい」と、室長としての思いを語りました。
 千葉氏からは、ご子息が当センターを利用されることになったきっかけや、あおぞらでは「親子で一緒に通う場所ができたことがうれしかった」、なのはなでの毎日の親子通園では「一番大変な時期だったが、やさしくするだけがよいのではなく、どのように子どもに接したらよいかを親が学ぶ場だった」、単独通園のひまわりでは「先生に頼ることができた」「人を信頼して子どもを預けることができた」など、当時を振り返り、保護者として感じられたことをご子息の成長に沿ってお話していただきました。さらに、大切なこととして 、幼児期からの関わりや、先生とお互いの気持ちをよく話し合うことなどについてもお話をしてくださり、参加していただいた多くの保護者にとっても大変参考になるお話だったのではないかと思いました。また、「地域への発信や卒業後の相談場所として、これからも安心して関われる場所としてあり続けてほしい」という、当センターへの期待も投げかけていただき、センターの役割として今後の課題であると感じました。
 吉川先生からは、多くの発達障がい児や知的障がい児、そのご家族に長く携わられたご経験と現在のお立場から、「早期からの支援で育まれること ~医療の立場から~」をテーマに、早期支援の目的や、なぜ早期からの支援が必要なのか、どのように子どもにかかわっていったらよいのかなど、早期支援のポイントをとても分かりやすくお話をしていただきました。また、療育の優先順位を3段階に分けて、本人や他の人がケガをするおそれがあることや不快な思いをすることを最優先の課題として取り組むこと、重点課題は本人や家族の負担が減らせ、かつ取り組みやすい半歩先くらいの課題を選ぶこと、さらに「ボタン大作戦」など名前をつけることで課題や目標がはっきりし、支援者の意識付けとなることなど、具体的な支援の方法をお話していただいたことで、ご来場のお客様だけでなく、支援者である職員にとっても改めて学ぶ機会を与えていただいたご講演でした。
 このシンポジウムでは、講師の先生方のお話の後に、就学・就園などの進路やお父さんとお母さんの協力などについて多くの質問が寄せられ、会場の皆様の関心の高さがうかがえました。それに対して、千葉様からは就学について考慮した点や、ご子息にまつわる素敵なエピソードを、また、吉川先生からは「お父さんに子育てを手伝ってもらう楽しいコツ」などをお答えいただくと、会場から頷きや微笑みがこぼれるなど、とても温かい雰囲気となりました。
今回のシンポジウムを通して、発達支援とは、子育て支援のシステムの整備もさることながら、子どもの育ちに適切な時期の課題への取り組み、家族への精神的なサポート、支援者と保護者間の連携など、これらが欠けることなく早期的に支援として連動していくことが大切であると確認できました。ご参加の皆様と共に、それぞれの立場から早期支援について考えることのできたとても貴重な時間でした。
 
   
 
肢体不自由児・重症心身障がい児シンポジウム
   
大南 友幸 氏  (児童デイサービス ひかりっこ 園長)
倉知 智美 氏  (保護者)
松野 俊次    (豊田市こども発達センター たんぽぽ施設長)


 午後からのシンポジウムは、刈谷の児童デイサービス ひかりっこ園長 大南 友幸氏、保護者の倉知 智美氏、当センターたんぽぽ施設長 松野 俊次がシンポジストとして、それぞれの立場で「早期からの支援で育まれること」をテーマに行なわれました。
 大南氏は、ひかりっこの前身「ひかりの家」が心身障がい児通園事業として療育を始め、その後、昭和56年から保護者の思いを汲み取る形で統合保育を開始したこと、活動の柱と特徴として「発達支援」「家族・母親支援」「統合保育」「医療ケアの実施」をあげ、日々の実践について分かりやすく説明をしてくださいました。そして、重度の障がいのある子の今後を考えた上で、ライフステージに見合った幾重もの支援の重要性を訴えられました。そのため、早期支援だけではなく、相談支援、学童放課後支援、地域連携等の拡充に取り組んでいく方針であると述べられました。
 倉知氏は、現在中学生となられたお子さんと、早期療育の場である「わくわく」、その後、肢体不自由児通園施設「たんぽぽ」に母子通園していたことを振り返って話題提供してくださいました。早期支援の良い点として、同じように障がいのある子どもの保護者と「わくわく」「たんぽぽ」を通じて知り合い、苦楽を共にする中で子育てを楽しいと感じられるようになっていたこと、専門職によるアドバイスで不安が軽減されたことを上げられました。その反面、障がいのある子に時間と手間をかけることで兄弟児に寂しい思いをさせたことがあったとして、障がいのある子をあずかってくれ、兄弟児との時間や母親一人の時間が確保できると良かったと感じていたそうです。そして、現在は「わくわく」「たんぽぽ」と一緒に通った保護者と今後の課題である学校卒業後の日中活動の保障のため、グループを立ち上げ、活動を始めていらっしゃいます。
 また、松野は、当センターたんぽぽ施設長の立場より、現在の早期支援のひとつである「わくわく」の現状と今後の支援の拡充のための課題について述べました。「わくわく」は、以前「たんぽぽ」の待機としての役割が大きかったのですが、「たんぽぽ」へ移行する子どもたちの割合が減少し、近年は発達に遅れのある未歩行児とその保護者への支援の場となっています。これは、豊田市内の基幹病院であるトヨタ記念病院との連携が深まり、当センターへの紹介が早期からなされるようになったことに大きな要因があると思われます。肢体不自由児、重症心身障がい児の発達支援や保護者支援だけではなく、発達全般に遅れのある子の保護者への早期からの支援が求められてきていると考えられます。今後、「わくわく」を月に2回から4回へ頻度を上げること、支援員の充実など、「わくわく」でできる支援を拡充し、地域との連携を深め、発達に遅れのある子どもとその保護者への早期からの支援を確実に行なえるよう、努力したいと述べました。
 このシンポジウムで、それぞれの立場から、早期からの支援は障がいのある子どもたちの発達支援だけではなく、その保護者の精神的支え、保護者間の連携にとって必要であり、ますます重要であることが確認できました。また、この時期に培われた保護者間の連携が、地域での活動、制度改革などに大きな影響を与えていることも分かりました。
 時間が限られており、充分な討論ができませんでしたが、今後の障がい児(者)の支援を考える上で有意義な時間となりました。
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